| 『我が心、君のみが知る』 考えれば考えるほど 不可思議になる 自分が何を望み 何を考え 何を思うか 何を捨て 何を残し 何を…アイスルカ――― 「……綺麗だな、さすがに」 窓の外に広がる赤い陽射しに彩られた山の風景を見て、俺は呟いた。 窓枠に腰掛け、外の景色を眺める。 「たまにはこういう風景も悪くない……。そう思うだろ?」 「そうだな……」 後ろから掛けられた声に振り向きもせず、俺は目の前に広がる光景を見つめる。 気にしていないのか、それ以上話しかけてくる気配は無い。 そのうち、ノートパソコンのキーボードを打つ音が聞こえてきた。 俺もわざわざ話しかけたりはせず、美しい光景を眺め続ける。 しかし残念なことに、外の風景が闇に染まり始める時間がすぐにやってきた。 早めの夕飯をここに着いてすぐ頂き、それからこの部屋に来たのだからそれも当然と言うものだ。 空に幾つかの星が瞬き始めると、乾に声を掛けられた。 「手塚、先に風呂に行ってくると良い。 俺が言うのも何だが、この部屋の露天風呂からの景色は格別だ」 「ありがとう。では、お言葉に甘えさせてもらう」 立ちあがりながら答えると、乾が暗い部屋の中でパソコンをしているのに気付く。 考えてみれば、俺が見ていた外の風景同様、部屋の中も暗くなって当然だ。 更に、俺は問題無いが、パソコンで作業をしている乾に電気が必要無い訳が無い。 「すまない、暗い中で作業をさせてしまったな」 「構わないよ。ディスプレイの明かりで、なんとかなっていたし」 「眼に悪いだろう?」 俺は窓を閉めると、部屋の入り口近くの壁にある電気のスイッチを入れた。 「あぁ、ありがとう」 作業に集中しているのか、乾はパソコンから視線を外さない。 邪魔をしないように、俺は静かにお風呂場に向かった。 一昨日、ミーティング後の部室で、俺は乾に呼びとめられた。 「今週末の予定は何か入っているか?無ければ、俺と一緒に山に行かないか?」 「特に予定は無いが……。乾が山に行くのか?」 趣味が登山である俺とは違い、乾に興味のある分野とは思えなかった。 「あぁ、正しく言えば少々違うな。俺が行くのは、山の麓にある旅館だから」 「旅館?」 「親戚の経営するその旅館に両親が行く予定だったんだが、行けなくなってしまったんだ。 そこでキャンセルするよりは、俺に誰かと行って来いという事になった」 「なるほど、事情は分かったが……」 何故、俺に白羽の矢が立ったのか、いまいち分からず眉をひそめる。 「そこは山に近いし、手塚の気分転換にもなるかと思って。たまには休息も必要だ」 乾の言う事も、確かに一理ある。 しかし、この重要な時期にテニスから僅かといえども離れて良いのだろうか…… 「テニスコートも完備されている。気になるなら、向こうでも練習は可能だ」 そう言われて、俺には乾と出かけることを拒否する理由が無くなった。 膨大なデータに基づいた発言をする乾に、元より反論する余地などないのだが。 「分かった。では、週末はお前と出かけよう」 そして、予定通り俺達は旅行に来た。 こんなにゆっくりとした時間を持てたのは、久しぶりのような気がする。 風呂からあがり浴衣に着替えながら、俺は誘ってくれた乾に感謝していた。 自分では中々気付かなかったが、疲れていたのだろう。 来る途中の電車でも、俺はすぐにウトウトしてしまっていた。 俺自身でも把握できないことを、乾は正確に把握する。 それは、俺が俺自身に無頓着だからだと乾は言うが… 俺は、乾の観察力が凄いのだとしか思えない。 その乾が休息を必要だと言うのだから、多分、今の俺には必要だったのだろう。 事実、俺も今は休息が必要だったと思っているのだから…… 着替え終わって部屋に戻ると、浴衣姿の乾がパソコンで作業をしていた。 「どうだった?ここ自慢の露天風呂は……」 「あぁ、とても良い景色だった。…乾、いつ着替えたんだ?」 「ん?あぁ、先ほど伯父に誘われて、大浴場の方で入ってきた」 作業が終了したのか、乾はパソコンを閉じる。 腕時計で時間を確認してから、乾は口を開いた。 「さて、手塚。少し散歩でもしないか?」 「これからか?構わないが……」 俺の肯定の返事に、乾は立ちあがる。 「一見の価値があるものを見に行こう」 「??」 「この時間が、一番良いんだ」 嬉しそうに微笑む乾に首を傾げながら、俺は乾と散歩に出かけた。 暗闇のなか月明かりだけを頼りに、俺達はその場所を目指す。 「間違い無く、見たことのない光景だと約束できるね…あぁ、そこの角を曲がればすぐだ」 乾の言葉に耳を傾けながら、俺は言われた角を曲がった。 「―――!」 あまりの美しい光景に、俺は言葉を無くして立ち止まる。 こんなに幻想的で、綺麗な風景を見るのは初めてだ。 「美しいだろ?この時期だけにしか見られない、珍しい光景だ。 この付近の住民は『真夏のクリスマスツリー』と呼ぶらしい」 「真夏の、クリスマスツリー……」 確かに相応しい名前だと思った。 数え切れないほどの蛍が、巨大なモミの木を淡く彩っている。 「なかなか見られない光景だ。蛍自体が、珍しいものになってきているからね」 乾の言葉を聞きながら、俺はゆっくりとその幻想的な世界の中心に近づく。 俺の身体の周りにも、小さな明かりが飛び交う。 「やはり…調和するか……」 「何か言ったか?」 乾の言葉を聞き返そうと振りかえろうとした俺は、暗闇にあった小石に気付かなかった。 「?!」 「っと。転ぶ確率は75%だったんだけどな」 バランスを崩して倒れかけたところを、乾に抱きとめられる。 「すまない、ありがとう」 礼を言って離れようとしたが、乾の腕から抜け出すことは出来なかった。 「乾……?」 「手塚が、俺の手から離れられる可能性は10%」 「どういう意味だ?」 俺は、眉をひそめて乾を見る。 「言葉通りだ。そして95%の確率で、手塚は俺の言っていることが分からない」 こんな場所でデータを用いて、何を言いたいのだろうか? 俺には、乾の言わんとすることが全く理解できない。 「……何が言いたいんだ?」 乾を睨みつけてみるが、俺の行動は予測済みのようで顔色一つ変わらなかった。 「このまま、腕の中であやしていてもいいんだけど、それも少々飽きたからね」 「?…何でもいいから、とりあえず放せ」 俺は乾から離れようと、無駄な抵抗を試みる。 分からない疑問はさておき、このままの状態は悪くないが出来れば遠慮したい。 悪くない……? 心の中の小さな疑問は、すぐに消し去る。 乾の腕は一向に緩むことは無く、逆にきつく抱きしめられてしまう。 「ここまで自分の心に気付かないのは、有る意味で問題だな……」 「自分の心?」 乾の呟きを、俺は聞き返した。 心に気付かない……? 「そろそろ自覚して欲しいんだけどね?まぁ、それが出来ないから手塚なんだろうけど」 「何を、自覚しろというんだ?」 眉間にしわを寄せて睨みつける俺に、乾は微笑む。 「自覚させるのは無理そうだな。……手塚、ちょっと眼を閉じていてくれ」 「……?」 疑問に思いながらも、俺は素直に目を閉じる。 「確率100%で、素直に眼を閉じる―――」 そう楽しそうに呟いた乾に、次の瞬間唇を奪われた。 「乾!?」 慌てて眼を開けて乾を睨みつけるが、乾は何食わぬ顔で、口を開く。 「俺は手塚が好きで、手塚も俺を好きだということを、手塚に自覚させるには、 少々強引ではあるけど、手っ取り早いし分かりやすかっただろう?」 乾が俺を好きだということは、乾の問題だし、この際放っておくとしても…… 「俺が、乾を好き―――?」 どうして、そんなことを乾が断言できる? 俺は、乾が好き?? ……そんなこと考えたこともなかった。 「自分自身が俺を好きかも…とは、考えたことも無いだろう? でも、考えなくても手塚の行動は正直だ」 「そんなことは、無い」 確かに乾のデータにミスはないと思う。 常に乾のデータは正確だと、俺も充分知っている。 「本当は手塚が本気で抵抗すれば、体力的なこと等から考えて80%の確率で この腕からだって逃げ出せるんだけど?本気で抵抗しないのは、どうしてだい?」 「どうしてって……」 そうだ…どうして俺は、本気で抗わない? 嫌なら、突き飛ばしてでも離れれば良いだけだ。 でも、俺はそれが出来ない。 「俺だからだろう?自惚れに聞こえるだろうけど、手塚は俺を絶対的に信頼しているから。 本気で抵抗するなんてことが、出来るわけないんだ」 乾…だから―――? 「そんなに考えこまなくてもいいんだけどな……それとも、離れようか?」 離れようとした乾の袖を、俺は無意識に掴んでしまった。 「あ……」 「ほら、行動は素直だろ?」 俯いてしまった俺の頭を、乾は抱き寄せる。 元より乾のデータは信頼しているし、さっきの自分の行動が無意識だったのも事実だ。 それなら俺は乾が好きなのだろうか…… しかし、乾の言葉はいつでも正しい――― 「乾が…好きなのかも、しれない」 確信は持てないがそう呟いた。 「俺のデータに間違いはないよ。特に、テニス以外の手塚のことならね」 満足そうに言う乾を見て、俺は思わず苦笑いしてしまう。 自分の心なのに、乾のほうが分かるなんて可笑しいだろう……? しかし俺には、否定する要因が無いのも事実だ。 だから、多分俺は…乾を好きなんだろう。 それを伝えることをしたくない俺は、無言で乾の袖を軽く引っ張る。 どうせ言わなくても分かっているだろうから――― 予想通り、俺は乾に優しく抱きしめられた。 〜Fin〜 |
反省文。
乾が急にお気に入りになって。。。衝動にかられて書いたものです(笑)
眼鏡キャラとはいえ、実際どんな顔かわからない乾は眼中無かったんですけど。。。(酷)
初めてテニプリのゲーム(S&T)で乾の声を聞いて。。。そう、メロリンです(謎)
しかも、愛する妹・朔夜に貰ったオススメのイラも乾と手塚だったし・・・
あ、そのイラが微妙にこの話しの源です(何)
乾は、やっぱり乾ですね。うん、こんなカンジで常にいそうだ(笑)
もちろん、待ち合わせとかでも。。。何分何秒遅れたとか、きっちりメモってそうだし。
そして、服装とかにも、かなりうるさかったりする・・・かも(爆)
『そのコートは去年の流行りものだね。今年の主流としては・・・』って、ファッションチェックしてそう(ぇ)
話し中に出てくる真夏のクリスマスツリーは、実在します。
俺が小学校の行事で行った、栃木県のとある村のはずれにあります。
あれは本当に一見の価値があります。機会があれば是非とも行ってみてください。。。
って、推薦したのは良いけど、今でもあるんだろうか・・・(汗)