| 『Suicide Seaside』 誰しも 特別な何かをもっていて 絶対的な存在であればあるほど それへの魅力は増していく だから君は 常にそれを求めつづけ 迷うこと無く まだ見ぬ聖域を目指す 僕は そんな君を見守ることすら耐えきれず ただ闇の深淵へと 堕ちていく 生きている証を 忘却するために――― まだ泳ぐには早すぎる6月の海…… 僕は何をするわけでもなく、ただ目の前の光景を眺めている。 今にも降り出しそうな雨雲のせいで、灰色の海が無限に広がっている気がした。 人類は海から生まれたという。そして、生まれた海に還えるとも――― こんな薄暗い海にでも、人は回帰できるのだろうか? そんなことをぼんやりと考えながら、僕は波打ち際に一歩足を踏み出した。 寄せる波が、僕の足元を何度も濡らしていく。 僕はしばらく目を閉じて、波音と足元の水の冷たさだけを感じていた。 ふと波音に紛れて聞こえる砂を踏みしめる音に、僕はゆっくりと振り返る。 「……どうして、来たの?」 一番逢いたくない―――否、逢ってはいけない人物の姿が、僕の瞳に映った。 僕の言葉に、トレードマークとも言える眉間の皺が更に深くなる。 「呼んだのはお前だろう……」 溜め息混じりに、そう呟かれた。 「僕は呼んでないよ。来る必要は無いって言っただろう?」 否定の言葉を紡ぐことでさえ、今の僕にとっては喜びにしかならない。 逢えないと思っていたのに、僕の目の前に手塚は立っている。 「確かに言われたが…その言葉に従う義務が、俺には無い」 もちろん、僕の言葉に強制力はない。 ただ、僕なりの忠告のつもりではあったんだけど、判らなかったかな? これ以上、君を傷つけたくはないのに…… しかしそんな優しい思考は、すぐに暗い心に押し潰されてしまった。 「別に良いけどね、僕は。でも、そんなに僕と一緒に居たいの?それとも―――」 僕はスッと腕を伸ばし、手塚のシャツの胸倉を掴み引き寄せると強引に唇を奪う。 「?!」 「またこういうことされたいんだ?」 至近距離で見つめると、射貫かれるような視線で睨まれる。 「違う」 キッパリと否定するくせに、手塚は僕の手を振りほどこうとはしなかった。 分かってるよ?君は、僕が心配で来ただけなんだって。 そんな残酷な優しさを持っているって、知っているんだ僕は…… だから僕は、卑怯になることしかできなくなる。 「じゃあ、もっと違う事でもして欲しいわけ?」 僕は少し背伸びをして手塚の耳元で囁くと、そのまま襟足の近くに唇を寄せた。 髪に隠れるギリギリのその場所には、数日前に僕が付けた痕がまだ色濃く残っている。 「やめろっ……」 さすがに今度は僕の手を振り払い、手塚は一歩後ろに下がった。 そんな手塚を、僕は薄く笑う。 「違うの?僕はてっきりして欲しいのかと思ったよ。わざわざ、手塚から来てくれたんだしね。 自分の行動が、飛んで火にいる夏の虫ってことぐらい分かってるだろう?」 「……そんなつもりは、無い」 拒否はするくせに、絶対に逃げようとはしない。 視線を逸らすことすらしない。 真っ直ぐで自分を偽ることを知らない手塚らしいけど、そのことが僕を苛立たせる。 「ねぇ、一体何しに来たんだい?」 「―――何も。ただ…海を見たくなっただけだ」 手塚の静かな返答に、僕は思わずギリッと歯噛みした。 正直な君がつく嘘はいつでも、優しい思いやりの言葉でしかない。 でも僕は、こんな甘い嘘は要らない…… 「そんな言葉…そんな嘘は欲しくない。僕が欲しいのは特別だって、手塚も充分に知ってるだろう? 誰にでも平等なのは君の優しさだと思うけど、僕にとっては単なる拒絶にしかならないんだよ?」 手塚は、無言で僕の言葉を聞いていた。 否定も肯定も無く、ただ黙って僕の瞳を見ている。 「知ってるよ……?君が特別に出来るのは、テニスだけなんだって。 他には何もいらないんだってことも―――それに、本当は僕の本心も知っていて、 それでいてなお、僕の我が侭に付き合っていてくれていることも。全部、僕は判ってるんだ……」 だって、君はどんなに残酷だと知っていても、自分の望みの為に妥協は決してしない。 手塚がそういう人だと…そんなこと、昔から僕は知っている。 でも、この想いはどうしようもなくて、君を困らせることしか出来ない。 「……俺は生きている限り、テニス以外を特別だと思うことは無い。 だから、お前の願いに応えることは、決して有り得ない」 今まで黙って聞いていた手塚が、やっと口を開いた。 「分かってるよ……?」 今更言われなくても、そんなのは判り切っている事だ。 手塚はふと辺りを見まわして、砂浜に落ちていたガラスの欠片を拾う。 「俺は、お前の気持ちに応えない」 真剣な眼差しで僕を見つめてそう呟くと、手塚は不意に海に向けて歩き出した。 「ちょっと待ってよ!!」 「来るな」 制止の声はあっさりと拒絶され、僕は踏み出した足を思わず止めてしまう。 その間にも手塚は、どんどん進んでいく。 海面が腰の辺りにくる深さになると、そこで立ち止まり振りかえった。 「不二が俺の特別になることは決して有り得ない。 だが、これ以上、お前を苦しめるわけにはいかないだろう……?」 「何を…言いたいの?」 手塚の言葉が…手塚の行動が、僕にはよく分からない。 足元を濡らす冷たい海水が、僕と手塚を繋いでいるはずなのに…… 波打ち際で立ち尽くす僕に、手塚は穏やかな表情で告げる。 「だから、お前の望みを叶よう―――」 ただ、呆然とその行動を見ていることしか僕は出来なかった。 イマ、ドウシタノ? テヅカハ、イッタイナニヲシタノ?? 「な、に……?」 動かなくてはいけない……心では分かっていても、何故か行動が伴わない。 手塚の周囲の海水が、少しずつ黒く変化していく。 その黒いものが彼の血だと認識できているのに、僕は動けずにいた。 「ねぇ、何でそんなことするの―――?そんなこと、しなくていいじゃないか。 こんな事、僕は望んでなんかいないよ……?」 「この方法でしか、俺はお前の願いを…叶えてやれない」 そう答えた手塚の姿はとても…本当に綺麗で、あまりに綺麗過ぎて僕の頬に一筋の涙が落ちた。 「なんで……?そんなこと、して欲しくないよ?どうして君は―――」 「どうしてと言われても、そうしたかったからだとしか…答えられないな……」 「……やっぱり、君は君だね」 こんな残酷で優しい人、見たことが無い。 ―――だからこそ、僕は君の特別になりたかったんだと思う。 手塚を何度穢しても、君は決して穢れることは無いだろう。 そう、誰も君を穢すことなど出来ないはずだ。 おそらく、君自身でも。 何故なら君の中では、穢されるという事自体が存在しないのだから…… 僕は海に入り手塚に歩み寄ると、その冷たい身体を抱きしめた。 「もう、分かったから―――」 僕の双眸から流れ落ちる涙を拭おうとした、手塚の左手を僕は捕らえる。 その左手に、僕は自分の右手を添えた。 「不二……?」 眉をひそめる手塚の頬にキスをして、僕はニッコリと微笑む。 「一緒に、還えろうね……」 生きる証を求めすぎた故に 少し汚れた心で生きることは叶わず ただ 忘却の彼方へと果てる 〜Fin〜 |
反省文。
すみません。。。とうとう自殺までさせてしまった・・・(汗)
でも、この話しの流れ的にこうしないと、俺の中で完結しなかったんで。。。
あと、知っている人は知っている。。。というか分かるでしょうが、これも曲の題名と一緒です(ぇ)
曲の内容とは、そこまで一致してないですけど・・・書き終わって題名考えたときに、友人の一言を思い出して・・・
友人:「メルアド変えようとおもうんだけどさ」
管理人:『何で?いいじゃん』
友人:「だって・・・これだと「海辺で自殺」だよ?−以下略−」
確かに、素直に訳せばそういう意味になるからな。。。
曲名だって分かる人は、全然問題無いですけどね。結局、彼女は他の曲にメルアド変えましたよ(笑)
っていうか、一応黒不二で書いたつもりが、書き終わったら、手塚の方が黒かった気がしないでもないです(苦笑)
手塚にしろ不二にしろ、黒と白ってあると思うんですが、如何ですか?(謎)
だって?手塚は天然だとも思うんですよね・・・うん、テニス以外については天然ボケってカンジです。
でも、手塚は頭も良いし。。。不二や乾と同じくらい(ぇ)実は策略家じゃないんだろうか?とも思うわけで・・・
その場合は白手塚とは言えず、まさしく黒手塚(笑)
不二の黒不二は定着してますけどね。。。塚不二じゃないのに黒い手塚ってどうなんだろう。。。?
でも、結局はどんな手塚でも大好きな管理人です(オイ)