| 『硝子の檻』 君の特別になりたいけど 特別が一つの君だから…… だから僕は君の心を塞ごう 君の特別が増えないよう――― 本当に珍しく、今日は部活が休みになった。 この際なので少々滞っている生徒会の仕事を消化しようと、俺は生徒会室で書類に目を通すことにする。 一人で仕事に没頭していた俺は、生徒会室の扉が開いたことにも気付かなかった。 「……何か手伝おうか?」 「?」 顔をあげた俺の視界には、入り口の扉を後ろ手に閉める不二の姿が映る。 「いや、結構だ。……何か用か?」 俺は相手が不二だと知り、再び書類に視線を戻しながら訊ねた。 「どれぐらいで終わりそう?待ってるから、一緒に帰ろうよ」 「……見当がつかない。せっかく部活が休みなんだ。早く帰ったらどうだ?」 少し考えてから、俺は返事をした。 相変わらず書類から視線は外さない。 「一緒に帰りたくない?」 「そういうことは言っていないが……?」 急な話の展開に、俺は眉をひそめて不二を見つめる。 「そう?なら良いんだけど?」 微笑んで不二は手近な椅子に腰掛ける。 完全に待つ態勢の不二に、諦めて俺は書類を閉じた。 「それで?」 俺は書類を片付けながら、不二に話しを促す。 「君の特別は……誰?」 不二はにっこりと笑いながら問い掛けた。 思わず片付ける手を止めて、不二を険しい視線で見つめる。 「それを、俺に聞くのか?お前が、俺に―――」 一体、不二が何を言いたいのか分からなかった。 そんな俺の疑問に気付いているだろうに、不二はそのまま話しつづける。 「越前も候補者?わざわざケガをおしてまで、全力で試合したほどだしね」 「……知っていたのか?」 訊ねるというより、確認の意味で俺は聞き返す。 「君のことで、僕が分からないことはないよ」 不二は、当たり前のことのように答えた。 微かに眉を顰めた俺に、不二は満面の笑みを浮かべる。 「当然でしょ?だって、それを許したのは君自身なんだから……」 「あれは―――」 反論しようとした俺の言葉は、あっさりと遮られる。 「君の良いところではあるけど……」 不二は一度言葉を切り、クスッと笑い再び口を開いた。 「それが君の弱さだ」 「一度心を許した人間には、徹底的にガードが甘い。もちろん、公私混同はないけど…… まぁ、僕には分かるんだけどね」 不二の言いたい意味が理解できず、俺はただ無言で睨みつける。 俺の視線を気にもせず、不二はニコッと微笑む。 「ねぇ、手塚。君の一番は、どんなことがあってもテニスだけだよね? じゃあ、越前に何をそんなに期待してるの? 青学の将来?それとも、他の何か?」 「一体、何が言いたいんだ?」 眉間にしわを寄せる俺とは対照的に、不二は相変わらず穏やかな表情だ。 「……越前は強い。そのうち彼なら、手塚のライバルになれるよね… いや、ライバル以上に彼は強くなるかもしれないね」 「確かに……越前は強くなるだろう」 今はまだ成長途中で、自分の才能を己で開花させることもままならないが…… いつか、俺達を越えていく可能性も高い。 軽く頷いた俺に、不二は微笑みかける。 「負けそうな自覚があるんだ?じゃあ、2度と試合はさせられないな」 「?」 「手塚に敗北は絶対にあげない。何があっても、どんなことをしてもね。 ……君が負けるのは、僕が許さない」 「何を、言っている……?」 不意に、左手が少し痺れてきた。 俺は無意識に、右手で左手を押さえる。 「そういえば、まだ完治していなかったんだよね?でも、そんなケガで君の一番は揺るがない ―――君の一番が揺らぐことは絶対に有り得ない」 言葉を区切った不二の表情が、一瞬にして変わった。 「じゃあ、どうしてそんなに越前にこだわるの?」 左手を押さえている右手に、思わず力を入れる。 俺が越前にこだわっている? 少し考えてみるが、そんなつもりは無い。 「……こだわってなどいない」 「そう?分かっているとは思うけど、君と越前は所詮同類だもんね。 ……あぁ、そういう意味で彼は特別なのかな。でも、越前が負ければ、特別になることは無理だよね」 一人で話を進める不二に、俺は眉をひそめる。 そんな俺の態度を気にしていないのか、不二は微笑を浮かべる。 「君の特別は、一つだけで良いってこと。それも、一生テニスだけでいい。他に特別は、いらない。 ―――テニス以外の特別なんて、絶対に作らせない。僕が全身全霊かけて、全て排除するよ」 「お前は…何を言っているんだ……?」 不二の言葉を、俺は理解できない…いや、理解はできてもどこかで否定している。 左腕が、とても重い――― 静かに立ちあがった不二は、クスッと笑った。 「手塚はテニスだけが特別なんだよね?そして、君の一番が変わる事は無い……。 特別を変えることができないなら、僕は君の特別になりそうなものを、一つずつ壊してあげる。 そうでもしないと、君が、いつか誰かを特別にしてしまうかもしれないでしょう? 僕では無い…他の誰かを―――」 近づいてくる不二は、変わらず微笑んでいる。 それでも、初めて怖いと思った…… こんな不二は知らない。 俺の知っている不二は――― 俺の…知っている不二は……? 「不二……」 いつもの笑顔で目の前に立つ不二を、俺はただ見つめることしか出来なかった。 両頬に手を添えられて、俺は優しくキスされる。 「手塚を縛る鎖は、テニスだけでいいんだから……」 そう言って微笑む不二は、何故か…とても綺麗だった。 俺達は どこで間違ったのだろう? いつの間に俺は この見えない壁に閉じ込められていたのか…… 逃げる術も分からず 俺は囚われ続ける この透明な世界の中で――― 〜Fin〜 |
反省文。
暗いです。。。何でこんなに暗い話しなんか書いたんだろう・・・(ぇ)
個人的に凄く黒不二が好きだったりします(笑)
だから、こんな暗い話しが発想できるんだろうな。。。
でも、俺の書く不二と手塚は。。。何故か不幸せ(爆)
忍妹の御願いもあるし、そろそろ幸せ不二塚?を書いてあげたいです。
ちなみに、越前と手塚は似たもの同士ってカンジ。。。
でも、きっと手塚のほうが純粋ですね(ぇ)いや、越前が不純というわけではないのですが(苦笑)
多分、管理人が手塚好きだからでしょうが・・・手塚は透明感があるんですよね。繊細なイメージ・・・
まぁ、越前との年齢の差っていうのもあるのかもしれないですけど(ぇ)
とりあえず、趣味の世界全開ってことで、ご容赦下さい(礼)