紅く染まる月に賭けた

 美しいあの人がルール

 
 

 Last Game

 
 
 
 

「切原ッ!!」

 
 
 

 ガタッと音を立てて、俺はサイドベンチから立ちあがる。

 コードボールに飛びこんで、ファントムボールを打った切原は、ポールに右肩をぶつけて微動だにしない。

「き、君っ!大丈夫か?!」

 審判席から降りてきて、主審が声を掛けた。

「う・・・」

 声に反応してか、切原がゆっくりと身体を起こす。

「大丈夫か?」

 その声に一瞬俺を見た・・・気がした。

「へ、ヘーキっすよ!ほ、ほら?」

 右腕をグルグルと振りまわして、心配そうな審判にアピールする。

「そうか?」

「はい、大丈夫っす」

 そう言って笑う切原の視線は、俺に向かっていた。

(大丈夫だから、心配いらない)

 無言の言葉が聞こえる。

 そう・・・俺は大丈夫。

 手塚さんは、動いてはダメっすよ?

 この試合、ちゃんと勝ってみせるから。

「さぁ。続けるっすよ」

 ケビンにニヤッと不敵に笑うと、切原はコートに戻っていった。

(だい・・・じょうぶなわけ、ないだろう?!)

 俺は愕然とする思いで、ベンチに腰を下ろす。

 切原の。。。あの態度を俺は知ってる。

 不動峰戦の時の越前・・・いや、氷帝戦の俺と、同じだ―――

 
 
 
 

「何故、切原はファントムボールを打たねぇんだ・・・?」

「温存してるんと違うか?」

「いや。赤也はそんなことはせん」

「だよね。さっきまでバシバシ打ちまくってたし・・・」

 菊丸の言葉に、跡部・忍足も頷く。

(赤也・・・何故ファントムボールを打たんのだ?まさか・・・!)

 真田の心に一抹の不安がよぎった。

 いや、それならばヤツが黙っているはずがないのだ。

 チラリと真田は視線をサイドコーチ席に送る。

 手塚は相変わらず無表情で、その感情まで読み取ることはできない。

 けれど、赤也を見る視線はどこか憂いを含んでいる気がする。

(赤也自身に任せる・・・ということか)

「おい、真田!切原はムリだな」

「跡部?」

「俺には見える・・・アイツ、気力だけでラケット握ってるぜ?」

「な?!ほな、やっぱりさっき―――」

「肩痛めちゃったってこと〜?!」

 忍足と菊丸の言葉に跡部は頷いた。

「だろうな」

「せやったら、医者にみせたほうがええやろ。早う棄権させたほうがええんちゃうか?」

「だよだよ!!」

「・・・誰がだ?」

 そう、ダレガ?

「「「え?」」」

 真田の問い掛けに、3人の視線が真田に集まる。

「誰が赤也を棄権させるんだ?」

「それは手塚が・・・」

 菊丸が言葉を言い終わる前に、跡部が口を開いた。

「しねえよな、手塚は」

 ヤツがそんなことをするわけがない。

 自ら棄権を申し出ない限り、手塚は止めない。

 例えそれが切原であろうとも。

「赤也が望まん限り、棄権など有り得ない」

 だから手塚は何も言わない。

 赤也の望みだから、お前は動かない・・・いや、動けないのだな。

「せやけど、もしも酷い怪我やったらどないすんねん?」

 今後のテニス生命にも―――

 忍足の言外の言葉に、4人の間に沈黙が流れる。

「。。。俺達には何もできん。この試合を見届けることだけだ」

 真田の言葉に頷いて、コートで行われている試合に4人は意識を集中させた。

 
 
 
 

「チェンジコート!」

 審判のコールで歩いてきた切原が、俺の前に立つ。

 その表情は不機嫌そのもの。

「きり―――」

「棄権なんてしないっすよ?」

 俺の言葉を遮るように切原が呟く。

 さすがに気付いていることは分かっていたか・・・

「お前の右肩は早く医者にみせたほうがいい。今後のこともある」

「ソレ、手塚さんに言われたくないっす」

 アンタだって跡部さんとの戦いの時、限界って知っててムチャしたんすから。

「切原」

「分かってるっすよ?早く医者にみせたほうがいいって。でも、ソレをアンタが言う?今後のことを考えて、

今、この試合を棄権しろって―――手塚さんにだけは言われたくないっすよ」

 テニスへの情熱はアンタが教えてくれた。

 ・・・負けらんないっすよ。

 それに、俺は負けることは許されない王者立海のエースっすからね。

「切原、人の話しはちゃんと聞け」

 小さく溜め息をついて、俺は切原を見上げる。

「?」

「棄権しろとは言っていない。お前が望まない限り、俺はお前を棄権させようとは思っていない」

 言っても聞かないのは承知している。

 今後のことを考えて・・・と俺が言っても、説得力がないのも分かっている。

「じゃあ・・・?」

「―――勝ってくれるんだろ?」

 そう、約束した。

 越前を使って下さるよう、俺が榊監督に頼んだと切原が知ったとき・・・・・・

 
 

 『手塚さんは、俺より越前が強いって思ってるんすか?』

 『そういうわけではない』

 『なら良いんすけど。・・・俺、もしシングルス1になったら絶対勝つっすよ』

 『・・・切原?』

 『アンタの代わりに勝つ。それから、越前へのアンタの期待の分も含めて、絶対勝つ』

 
 

「当然っす」 

 ニッコリといつもの笑顔で切原が笑った。

「なら、勝って来い」

「ハイッ!」

 俺の言葉に大きく頷いて、切原はコートに向かう。

 その後姿を俺は静かに見つめる。

 本音を言えば、今すぐにでも棄権してもらいたい。

 しかし、それは切原が望んでいない。

 俺だから分かる・・・というのは傲慢だと思う。

 だけど、切原がこの試合に賭ける情熱が分かってしまう以上、俺には止めることはできない。

(真田、すまない・・・・・)

 
 
 
 

「止められなかったみたいだな・・・」

「あぁ」

 跡部の言葉に真田は軽く頷いた。

「ええんか?真田。立海のエースを欠くことになるかもしれへんで?」

「構わん。それが赤也の選んだ答えだ」

 己が決めたことは貫く。

 もちろん、約束を違えることなど許されない。

 そして、負けることは許されない。

 それが王者立海の掟だ。

(だから手塚。お前が気にすることはない。全ては赤也が自ら決めたことだ・・・)

 
 
 
 

 そう、これは俺が決めた答え。

 
 

 これが俺の選んだ未来。

 
 

 誰にも止めることは出来ない。

 
 

「俺は目の前の敵を倒すだけ」

 
 
 
 

 だから―――

 
 
 
 

 〜 Fin 〜

   

   □ 反省文 □

 10/13日放送分アニプリと次回予告を見て急遽作成。
 赤也萌え〜.....φ( ̄∇ ̄*)VV

 っていうか・・・誰かツッコミ用ハリセンを投げつけてください。
 誰だよって言いたいのも充分に分かります。自分も言いたいので;
 跡部・真田が暴走してしまったのは、自分が好きだからです☆

 切原×手塚ってアリですよね?『アンタ、潰すよ?』発言があったわけですし。
 赤也は手塚にめろりんきゅんvなわけですし(笑)