夢から堕ち 片翼の天使になった私は 貴方という風に護られ もう一度羽ばたいた…… 夢追い
トゥルルル… トゥルルル… トゥルル カチャッ 『もしもし』 聞き慣れた声に、少し安堵する。 『……どうした、何か用か?』 私は無言だった。 少し、口の中が渇いている…… テレフォンカードの度数が1つ減った。 『聞いてるか?』 「……国光」 また、テレフォンカードの度数が減る。 『なんだ…聞こえているのか。それより、どこから電話をかけているんだ?声が遠いようだが……』 「……よく、私だってわかったね……」 『お前ぐらいしか、こんな時間に電話をかけてくるような知り合いは思いつかないな……。 しかし、一体どこからかけているんだ?。少々声が聞き取りづらいぞ』 そんな事でも、私だって分かってくれて……少し嬉しくなった。 「うん、病院なんだ……」 『―――何故、このような時間に病院にいるんだ?誰か、ご家族の方でも急病になられたのか?』 いつも通りの国光だ。 何も変ってない、何も…… 「あのね……テニス、できないんだ……」 私の言葉に、電話の向こうで国光が眉をひそめたのが、何故か容易に想像できた。 『……一体何をした?』 「できないんだって……そう、言われたんだ」 『何故だ?』 ストレートに聞かれて、私は一瞬返答に困る。 「それは―――」 『ケガをしたのか?』 「……昨日の練習中に転んで、左足首をひねったみたいだったんだけど…放っておいたんだ。 でも、夜になっても痛くて……。ただ、朝には痛みが引いていたから、そのまま練習試合にいったんだ。 そしたら、また試合中に痛みが酷くなって……試合、負けてしまった――― それで、帰ってから病院に行ったら、そう言われた」 国光に説明している私は何故か冷静で…… まるで他人事だ。 『そう、か……』 国光が返事に困っているのが、電話なのによく分かった。 「うん、そうなんだ」 『……歩けないということか?それとも、今までのようにはプレイできないということか?』 「―――今までのようには無理だってこと。日常的な生活には、あまり影響がないはずだって……」 『そうか……』 黙ってしまった国光。 困ったときに、黙ってしまうのはいつもと同じだ。 いつも通りの国光、いつもと違ってしまった私――― 「ごめん、国光。私、大丈夫だから……。もう、大丈夫だからさ」 『……無理はするな』 国光、全然信じてない。 それも当然か…… テレカの残りが、後僅かになった。 「大丈夫!あ、ごめんね。こんな時間に電話して…って、いつものことか」 国光がいつも通りなら、私もいつも通りじゃないとダメだ。 そうじゃないと、・・・いつも・・通り・・じゃ・・なく・・・なって・・・しまう――― 『そうだな。しかし、気にしなくてもいい。お前の非常識には慣れた』 明るく喋る私に合わせてくれる国光、―――ありがと。 「ごめんなさい。というわけで、テレカがもう無いので切ります」 『あぁ、またな。おやすみ……』 「またね、おやすみなさい」 カタン… ピピーッ ピピーッ ピピーッ 薄暗い静かな病院の廊下に、独特の甲高い音が響く。 受話器を下ろしながら聞こえた国光の言葉…… 『無理に明るくするな―――』 それが、国光の本心だろうね。 「……でもね、国光。無理してないとダメかもしれない……」 そう呟いて、私は病室に戻った。 病院から退院して、今日で一週間…… 私はテニスコートのベンチに座って、練習風景を眺めていた。 お医者様から言われた通り、私の左足首のケガは、日常生活において殆ど問題無かった。 今はまだ、サポーターが必要だが、そのうちそれも必要無くなる。 でも、もちろん…今までのように、大好きなテニスを思いっきりすることは出来ないのだろう。 顧問の先生には、まだその事を言っていない。 単なる捻挫だと…そう言って、私は部活に参加している。 もちろん、全ての練習に参加することはできないので、軽くできるような練習メニューにのみ参加していた。 今は、ラリー練習なので私は参加させてもらえなかった。 普通に練習できる皆を見ているのが辛い。 水でも飲んでこようと思って、私はタオルを持ってベンチから立ちあがった。 水飲み場に向かう途中、男子部のコートの前を通る。 テニスをしている男子部の人を見ていると、国光を思い出した。 ―――あの電話以来、私は国光と話をしていない。 珍しく国光から電話をしてきてくれたにもかかわらず、私は居留守を使ってしまった。 だって、今の私は…多分、国光とは逢えない。 もし逢ってしまったら、きっと何かが壊れてしまう…耐えきれなくなってしまう…… そんな予感が何故かあった。 だから、私は国光とは逢えない。 今はまだ――― 「でも、いい加減…居留守は失礼だよね……。後味悪いし……」 「その自覚があるなら、止めることだな」 「!!」 水飲み場の少し手前で、不意に背後から声をかけられた。 しかも、聞きなれた…でも、聞きたくは無かったその声は――― 振りかえった視界には、制服姿の国光がいた。 「何で…いるの?」 「電話に出ないなら、逢いに来るしかないだろう?」 小さくため息をついて告げる言葉に、私を責める雰囲気は無い。 「分かってるだろうけど、他校の人は立ち入り禁止だよ?」 「あぁ、知っている」 「……青学のテニス部部長としての仕事や、生徒会の仕事で忙しいでしょ?」 「今日は自主練習だ。生徒会のほうも問題無い」 「自主練なら、練習したほうがいいんじゃないの?ランキング戦も近いんだから……」 せっかく逢いに来てくれたのに、私の口から出る言葉は、責める言葉しか出てこない。 そんなことは気にもとめてないように、国光は相変わらず穏やかだ。 「もちろん行う」 「じゃあ、早く練習しに行ったほうがいいんじゃない?国光は忙しいんだから、時間を有効に使わないと」 「に逢うことも、俺にとっては充分に大切だ」 普段なら嬉しい国光の言葉でも、今の私には辛かった。 「―――私は、逢いたくなかった…話したくなかったの。だから、居留守まで使ったのに……」 だって、逢ってしまえば…私は絶対に国光をねたんでしまう。 ヤツあたりだって分かっていても、絶対に詰ってしまう。 まだ腕のリハビリの途中だけど、国光はそれが治れば大好きなテニスが出来る、 全国に行くという夢も叶えられる状況にいる国光を――― 「……。俺に言いたいことはないのか?」 いつも通りの穏やかなその声に、私はただ黙って首を振るしかなかった。 「本当に?無いのか?」 「無い、よ」 俯いて答えた私の頭に手をやってポンポンと軽く撫でる。 ……国光のこの癖は、ズルイ。 何でも受けとめてやるからって合図みたいで、私は甘えてしまいたくなる。 でも、嫌われたくはないから、言うわけにはいかない。 そんな私の心なんて見透かしたみたいに、国光は優しい言葉を告げる。 「もしも、俺に嫌われることを恐れているのだとすれば、それは無用だ。それよりも、の心を分かれないほうが俺は嫌だ」 「!!」 「だから、教えてくれないか?」 もう…耐え切れなかった。 「―――だって、国光はテニスができるでしょ?そんなのズルイよ。私はもう出来ない。 出来ても今までみたいに、思いっきりテニスはできないんだよ?……まだまだやってみたかった。 また国光とだって練習したかったよ?全国大会に行くっていう夢だって、叶えたかった。 ……なのに、そんなこともう出来ないの。…そんなの、いやだよ……もっと、テニスがしたいの……」 もっとテニスがしたかった…… 全国大会出場って夢も、挑戦する前から叶わないなんて――― 黙って聞いていた国光が、優しく私を抱きしめる。 「そうだな……」 「……もっと…ずっと、テニスがしたかった。テニスが大好きなの……」 大好きだったのとは、言えなかった。 だって、今でも私はテニスが大好きだから…… 国光は私の言葉を聞いて、微笑を浮かべる。 「がテニスを嫌いにならなくて良かった……」 「なるわけないでしょ?」 「……そうだな」 間髪入れずに答えた私に、国光は苦笑した。 それから、真っ直ぐに私を見つめる。 「―――俺が必ず全国大会に行ってみせる」 「それが国光の今の夢というか…目標だからね」 きっと国光なら、全国に行けると思う。 思う…というよりも、絶対に行って欲しい。 「いや。今日からはの夢でもある。だから、が必要だ」 「私?」 国光の言葉の意味が分からずに、首を傾げる。 「あぁ。お前の夢は確かに叶わないかもしれない。だが、俺と一緒に練習すればいい。そうすれば、 俺の夢への過程を共にすることで、は俺の夢を共有する。だから、全国大会に行くという俺の夢は、の夢でもある」 でも、それは本当の夢にはならない。 それはもちろん、国光も分かって言っているだろう。 こういう逃げ道を作ることで、私を救ってくれるんだよね……? 国光のその優しい言葉に、私はニッコリ微笑んだ。 「……それじゃあ、絶対に行ってもらわないとね」 「そうだな」 「よし。じゃあ、はりきって練習だ!行こうか?国光」 そのまま練習しに行きそうになった私を、苦笑して国光が引きとめる。 「は、まだ部活中だろう?大体、荷物を置いて帰るつもりか?いつもの場所で練習しているから、後で来ればいい」 「……早退してくる。だって、どうせろくに練習できないし」 「こらこら……」 「部長に言ってくるから、ここで…は駄目だね。正門のトコで待ってて?」 私が言い出したら聞かないことを知っている国光は、諦めたように苦笑して頷いた。 「分かった。では、ゆっくりでいいからな?急ぐなよ?」 「了解」 心配する国光の声に明るく返事をしながら、私は急ぎ足でコートに向かった。 少しでも早く、大好きな国光と大好きなテニスをするために…… 〜 Fin 〜 |
反省文。
自分のオリジナルが原案の初ドリーム小説。だがしかし・・・本当に主人公に国光って呼ばせるのが嫌なんですよ(笑)
マジむかつくんですもん(死)なので、ドリーム小説書きは向いてないと思っていたんですが・・・
自分の名前って言うか、HNみたいなもので作ると―――アラアラ不思議。ハマります(爆)
でも、こういう微妙に不幸な主人公はどうなんでしょうかね・・・・・・
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