人の心を惑わすのは 言葉だけとは限らない その華のような微笑には 誰もが魅了される…… 天使の微笑み 早朝から、テニスコートには手塚の厳しい声が響いている。 いつも通りの朝練の光景だ。 しかし、一つだけいつもと違う存在があった。 それは――― 「・・・・・・?」 ボレー練習の順番を待っていたルーキーの越前が、フェンスの外に視線を飛ばす。 いつもの光景に似つかわしくない存在が、視界の端に映ったからだ。 フッと視線を向けるとフェンスの外を歩いている、制服姿の女子生徒の姿。 こんな早い時間に、コートの近くを通る女子生徒は今まで見たことが無い。 「おちび〜!どうったの?」 越前の視線に目ざとく気付いて、菊丸が近寄ってきた。 「何でも―――」 ないっすと続けようとした言葉は、菊丸の歓声にかき消される。 「にゃ!ちゃ〜ん!!」 あっという間に菊丸は、その少女めがけて走っていってしまった。 「??」 取り残された越前は、ただその光景を眺めるしかない。 「おはよう!ちゃん」 さすがにコートの外に出る勇気はないのか、菊丸はフェンス越しに声を掛けた。 「おはようございます、菊丸先輩」 ニッコリと微笑む。 (はにゃ〜。今日も可愛いニャ♪) 「えっと…あの、ここのコートの入り口ってそこで良いんですか?」 少し首を傾げて入り口を指差すに、菊丸は大きく頷いた。 「あってるよん!今俺が……」 「さん、こっちだよ」 最高と言うべきタイミングで、不二がニコニコ笑顔で入り口を開けて手招きする。 菊丸の第一声に3年レギュラー陣が気付かないはずも無く、もちろん、美味しいトコを菊丸だけに持っていかせるようなことを するわけが無かったのだ。 「ありがとうございます」 は小走りで不二のところに近づく。 「不二、ずるい〜!」 菊丸の抗議は無論無視される。 「英二。次、お前の番だぞ」 「うにゃ〜〜〜〜!!」 果敢に再びのところに行こうとした菊丸は、無情にも大石に引っ張られてコートに戻された。 順番なのも確かだが、抜け駆けされたくないのは大石とて同じだ。 「おい、越前。アレ誰だか知ってっか?」 達をチラッと見ながら、桃城が越前に話しかける。 「俺に聞かないで下さい」 こっちが聞きたいくらいだといわんばかりの越前の態度に、桃城も肩をすくめた。 「誰だかしらねぇけど、可愛いよな、あの子」 「そっすか?」 「そうじゃねぇ?とりあえず、顔は可愛いと思うぜ?」 (スタイルも抜群だけどな) 「ま、スタイルは悪くないんじゃないんすか?」 (可愛いより綺麗ってカンジっしょ) そんな邪道?で正常(笑)なやりとりに、は全く気付くわけもない。 わざわざ扉を開けてくれた不二に、和やかに朝の挨拶をする。 「不二先輩、おはようございます」 自分への微笑にノックダウンしながらも、さすが魔・・・いえ、天才というべき完璧な不二は何食わぬ顔で微笑みかえした。 「おはよう。こんなに早起きで大丈夫だった?」 さりげに気遣うあたりが、さすが(何が)不二。 「あ、大丈夫です。慣れてますから♪」 「は早起きでも平気なのか……」 不二の後ろから近づいてきた乾が呟く。 もちろん、不二だけに美味しいところを持っていかせるわけはナイ。 「乾先輩。おはようございます」 乾も例外無く、の微笑みにドキドキしながら、ここぞとばかりにデータ収集は欠かさない。 「おはよう。慣れているという事は、以前も早起きをしていたということか?」 「まぁ…そう、ですね」 歯切れの悪いに、乾と不二が問いかけようとしたときに手塚の声が飛んだ。 「全員集合!」 「あ、呼ばれてますよ?」 の発言に、不二と乾は同時に苦笑した。 「さん。聞こえなかった?全員集合って、手塚は言ったんだよ?」 「え?あ、はい。言いましたけど……?」 全員集合、だよね? 不二の言葉に、は首を傾げる。 「つまり、テニス部全員ということだ」 「……ということは?」 未だに理解できていないに、乾と不二が同時に言った。 「「テニス部のマネージャーも含まれるんだよ」」 マネージャー・・・も? ・・・・・・アッ! はようやく理解してエヘヘと笑う。 「私もですね!」 ((天然だ・・・)) 不二と乾は改めて確信した。 「そういうこと。じゃあ行こうか?」 「はい」 2人と一緒に、は手塚の元に集合した。 3年レギュラー陣達はの存在を知っている。 むしろ、他のヤツらには見せたくもないのだが、そういうわけにもいかないし無理だ。 何せ、彼女は今日からマネージャー(お験しキャンペーン)なのだから。 そんなコトを他の部員が知るわけも無く、視線はに集中する。 「誰?アレ」 「さぁ?」 小声で話す部員の声は、手塚の睨みで消え去った。 「、こちらへ」 手塚に呼ばれて、はその横に歩いていく。 その反対に立っていた大石が笑顔でを見て、部員に向かって口を開いた。 「こちらは、今日から2年5組に転入するさんだ。マネージャーとして仮入部してもらった。さん、 自己紹介お願いしても良いかな?」 大石に促されて、は「ハイ」と頷く。 自己紹介・・・ やっぱ、第一印象って大事だよね? まともなこと言えそうにないけど、とりあえず笑顔♪ 「えっと…です。マネージャーというお仕事はしたことが無いので、ご迷惑をおかけしてしまうかもしれないんですが、 一生懸命がんばりますので、宜しくお願いします」 ペコリとお辞儀してニッコリ笑ったの笑顔、それこそまさに!正真正銘・天使の微笑み。 その笑顔に、部員全員があっさりと打ち落とされた。 (可愛いッ!!) (注:あまりに多人数のため、かぎカッコ略/笑) こんなに大人数の心の叫びがシンクロすることなど、滅多に無いだろう・・・いや、ありえない。 「が慣れるまでは、協力するように」 言うまでもないだろうが。 「はい!!」 (注:あまりに多人数・・・以下略) 手塚の予想通り、部員の中で協力したがらないものなどいるわけが無かった。 「じゃあさん、戻ってていいよ」 「はい」 大石に言われて、が元居た場所に戻ろうとした瞬間…… 「キャッ!」 「?!」 何も無いコート上に転んだのは、もちろん。 手塚が手を伸ばしたものの、少しのタイミングで間に合わなかった。 隣にいた手塚(限定)は間に合わなかった。 思ったほどの衝撃がないことを不思議に思ったがうっすらと目を開ける。 自分の身体の下はコート・・・・・・・・じゃなくて人!? 「す、すみません!大丈夫ですか?」 は下敷きにしてしまった人を心配そうに見つめる。 「あぁ・・・」 「本当ですか?私、思いっきり・・・」 「だ、大丈夫・・・だ・・・」 「、早く海堂から退いてやれ」 そうしないと、海堂の命が保証できない。 手塚に言われて、はたと自分の状況を思い出す。 はまだ、自分の前にいた海堂を(ある意味)押し倒したままなのだ。 「え?あ!す、スミマセン///」 慌てて海堂の上から退く。 しかし、自由の身になったはずの海堂は動かない。 転んだを心配して駆け寄った3年レギュラー陣+他の全部員の発するダークオーラにより、海堂は凍り付いているのだ。 いくら海堂に非がないと分かっていても、事故でも、不可抗力でも・・・理屈じゃない。 「海堂、大丈夫か?」 「あ、ケガはないよな?」 「あんな華奢な女の子に押し倒された位だから、全ッ然平気だよね?」 あれよあれよという間に、の横から海堂がいなくなった。 無論、不二と乾の完璧頭脳作戦による部員全員の攻撃によって・・・だ。 「大丈夫か?」 手塚が静かに問い掛ける。 さすがの手塚も、全員から海堂を助けることは不可能。 いや、多分、少しは助けたくないと思っているお年頃(笑) 「あ、はい。大丈夫です」 何も無いトコで転んでしまったことや海堂に抱き着いてしまったという羞恥心からか、の顔は紅くなる。 その表情に、またテニス部全員のトキメキ度が上昇するのだ。 「立てる?」 不二の差し出した手には一瞬キョトンとする。 そして意味に気付いて微笑む。 「ありがとうございます、不二先輩。大丈夫です、慣れてますから♪それより先ほどの方にお礼と謝罪を・・・・・・」 不二の手を本当に軽く握っては立ちあがる。 「海堂にそんなんしなくたって良いって☆それよりちゃん。慣れっていうけど、転ぶって慣れとかあるかにゃ〜?」 「ありますよ♪ちなみに、お礼も謝罪も必要ですからね?」 「慣れというよりも、クセといったほうが正しいんじゃないかな。いや、それよりも筋力等の問題かもしれないと考えると、 何かの病気の症状ということも・・・・・・」 「そんな病気だなんて・・・」 「何〜!?病気だと〜〜〜〜!!ショッキーーーーーーーッン!!」 「?!」 「タカさん!落ちついて。仮定の話しだし。ほら驚いてるよ。ごめんね?さん。タカさんラケット持つと・・・いや、 たまに持ってなくても(初めてだけど;)こうなるんだ」 「あ・・・・・・ハイ。そ、それより、不二先輩。よろしければ、あの、手を・・・・・・」 「ん?手がどうかした?」 「あ〜〜〜〜!!不二、いつまでちゃんの手を握ってるつもりっ!?」 「永遠に、だよ」 「「「「「今すぐ離せッ!!」」」」」 「・・・・・・仕方ないね。今日は諦めるよ。また君と手をつなげると良いな」 「どうも・・・デス」 「それよりも、。ケガはないのか?」 「あ、大丈夫ですよ。手塚せんぱ・・・じゃなかった、部長。ご心配おかけしました♪えっと、それで先ほどの方・・・・・・」 「あ!」 お試しマネージャー姫と6人のナイト達。 そんな題名が浮かびそうな光景を呆然と見ていた部員の中で、我に返った3人。 「ん?どうかしたかい?」 「いえ、何でもないっす……」 大石に問い掛けられて口を濁したのは、桃城・越前、そしてとりあえず、復活した海堂。 転んだをみて、昨日の妙な少女を思い出したのだ。 (((転びやすいのか……))) 心の中で苦笑しながら、そこが妙に可愛いと思った3人であった。 可愛い転入生を、お試しながらマネージャーとして獲得した男子テニス部。 レギュラー争いの他にもうひとつ、違う戦いが勃発しそうな予感・・・・・・ いや、間違いなく近いうちに、戦いの火蓋は切って落されるだろう。 そしてその決着がつく日はもちろん、女神のみぞ知る――― 〜 Fin 〜 |
反省文。
修正アリ仕様です。書きなおしてたら海堂が殆ど登場せず、更に書きなおして今に至る(苦笑)
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